西野亮子×井田徹治×新井麻希:ペット消費大国日本に住むわれわれが知っておかなければならないこと

西野亮子×井田徹治×新井麻希:ペット消費大国日本に住むわれわれが知っておかなければならないこと

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セーブアース 第19回(2024年4月18日)
ゲスト:西野亮子氏(WWFジャパン 野生生物グループ長&TRAFFICプログラムオフィサー)
司会:井田徹治、新井麻希

 第19回セーブアースでは、最近増えている希少な野生生物をペットとして飼育することの問題点を取り上げた。

 フクロウカフェやハリネズミカフェなど最近、さまざまな珍しい動物たちと触れ合えるカフェをよく目にするようになった。生き物との接触をウリにしたお店はアジア地域に多く存在し、とりわけ日本では犬や猫以外の珍しい動物を扱う店が増えている。また、珍しい爬虫類の展示即売イベントも全国各地で開催されているが、その中には絶滅危惧種が販売されているケースも多くみられると、WWFジャパンの西野亮子氏は指摘する。

 希少生物に直接触れる機会が多くなったことで、野生生物をエキゾチックペットとして家庭で飼育しようと考える人が増えている。特に爬虫類は、散歩の必要がなく狭い場所でも飼育できるため飼育しやすいと安直に考える人が多いようだが、実際にはこうした生き物に適した環境を整えるのは容易なことではない。特に希少動物の場合、飼育方法も確立されていないため、病気になった時の対応も難しい。

 西野氏は希少動物は人工的な繁殖方法が確立されていない場合が多いため、野生の状態で捕獲した個体を市場に流している場合が多いという。しかし、野生生物をペットとして飼育することになると、さまざまな問題が生じる。

 まず、野生動物を商業目的で捕獲するようになると、その動物を絶滅に追い込むリスクが高まる。野生生物の捕獲については地域や国によって規制が異なり、まったく保護されていない場合もあるし、生息地域では規制があっても国際取引には規制がない場合もある。また、日本に持ち込まれれば、日本国内に何ら規制が設けられていない場合もある。仮に違法な輸入が判明した場合でも、生息地に戻すことは困難なので、最終的には国内の動物園などに引き取ってもらうしかない場合もあるという。

 また、野生動物の飼い方にも問題がある場合がある。例えば、スローロリスはSNSで可愛い姿が発信されたことで人気を呼び、密猟や密輸が増えたためにワシントン条約でペットとしての輸入が一切禁止されるようになっているが、嚙まれると人体に毒が入り危険なため、抜歯して飼われる場合があるという。このように動物の福祉という意味からも問題が指摘されている。

 WWFによると、世界の脊椎動物は急激に減少しており、その個体群数は1970年から2018年の間に69%も減少しているという。さらに、絶滅危惧種を列挙したIUCNのレッドリストによると現在、4万4000種を超える野生の動植物が絶滅の危機に晒されているという。これはIUCNが評価対象としている種の28%を占めるが、そもそも評価対象となっている種は全体の5%に過ぎない。そのため実際にはこれより遥かに多くの種が絶滅の危機に瀕していると考えられている。

 希少生物は愛らしい見た目や珍しさが目を引き、これをペットとして飼いたいと考える人が出てしまうのは理解できる。しかし、これらの可愛い希少生物を絶滅に追い込むことなく、この先も地球上で共存していくためにわれわれは何をしなければならないのかは知っておく必要があるだろう。西野氏と環境ジャーナリストの井田徹治と、今回からセーブアースの司会陣に加わったキャスターの新井麻希が議論した。

【プロフィール】
西野 亮子(にしの りょうこ)
WWFジャパン 野生生物グループ長&TRAFFICプログラムオフィサー
1977年東京都生まれ。2000年玉川大学文学部卒業。09年WWFジャパン入社。広報、重点種プログラム推進などを経て21年より現職。

井田 徹治(いだ てつじ)
共同通信編集委員兼論説委員 環境・開発・エネルギー問題担当
1959年東京都生まれ。83年東京大学文学部卒業。同年共同通信社入社。科学部記者、ワシントン特派員などを経て2010年より現職。著書に『ウナギ』、『生物多様性とは何か』『データで検証 地球の資源』など。

新井 麻希(あらい まき)
キャスター
1982年東京都生まれ。2004年慶應義塾大学法学部卒業。05年TBSテレビ入社。アナウンス部を経て10年よりフリー。

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